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札幌家庭裁判所 昭和47年(家イ)995号 命令

申立人 都田義夫(仮名)

相手方 都田千鳥(仮名)

第三債務者 吉川陽子

主文

申立人は相手方および長男保、二男慎二に対し、それぞれの当座の生活費にあてるため一括して、金四万円を当庁家庭裁判所調査官吉川陽子に寄託して支払え。

家庭裁判所調査官吉川陽子は前項により寄託を受けた金員より、相手方および長男保、二男慎二の各需要に応じ、その都度、相当額を各当事者に支給し、支給の明細を書面で当調停委員会に報告せよ。

理由

本件当事者間には性格の不一致や相互不信から多年にわたる深刻な葛藤が存在し、当事者間の長男保(昭和二九年一一月二七日生)、二男慎二(昭和三二年一二月一六日生)の人格形成上も憂慮に堪えない事態に立ち至つていた。そのうえ申立人は上記各子が父に暴行を加えるとして、所轄の警察署に虞犯の届出をしたことから、両少年について少年事件が当庁に係属したところ、少年の失火により本年一月その居宅が全燃し、申立人と相手方とは完全に別居し、申立人は勤務先を退職したことが判明した。

そこで、当調停委員会において、申立人に対し相手方および両少年の当座の生活費を支払うよう勧告したところ、申立人は金四万円程度を負担する用意はあるが相手方の家事管理能力に信を措き難いとして難色を示した。

申立人の懸念するところが全く根拠のないこととも認められないし、さりとて上記少年事件の発生経過および各少年の年齢から考えて少年に一時に当座の生活費金四万円を支給させることにも問題がある。したがつて、異例のことではあるが当該少年事件の調査を担当する当庁調査官吉川陽子に上記金員を寄託させ、同調査官より、各当事者の需要に応じてその都度相当額を支給させるようにするのが、本件の場合もつとも適切な措置と認められる。

よつて、支給状況の監督をも含めて、家事審判規則一三三条により主文のとおり仮の措置を命ずることとする。

なお申立人がこの命令に従わないときは金五、〇〇〇円以下の過料に処せられることがある。

(家事審判官 山本和敏 調停委員 中村清信 東美智子)

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